これさえ読めば安心!大切な服を守る新しい洗濯表示の正しい読み方と注意点
大切な服を長く、良い状態で着続けるためには、適切なお手入れが欠かせません。そして、その適切なお手入れ方法を知るための最初のステップが、「洗濯表示」を正しく理解することです。
2016年12月に洗濯表示が国際規格に準拠した新しい記号に変更され、以前よりも記号の種類が増えました。「複雑になった」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、それぞれの記号が持つ意味を正確に把握することで、大切な服へのダメージを防ぎ、最適な方法でお手入れできるようになります。
この記事では、新しい洗濯表示の基本的な見方から、それぞれの記号が示す具体的な意味、そして表示を守る上での大切な注意点までを分かりやすく解説します。これさえ読めば、もう洗濯表示で迷うことはありません。
なぜ洗濯表示を確認する必要があるのか?
服には様々な素材が使われており、その素材や加工方法によって適した洗い方、干し方、アイロンのかけ方が異なります。例えば、ウールやカシミヤのセーターを普通の洗濯機で洗うと縮んでしまったり、デリケートなシルクを強く絞ると傷んでしまったりします。また、漂白剤の種類によっては、色落ちや生地の劣化を引き起こす可能性もあります。
洗濯表示は、その服を製造したメーカーが推奨する、最も安全かつ効果的なお手入れ方法を示しています。洗濯表示を無視してお手入れをすると、色落ち、縮み、型崩れ、毛羽立ち、風合いの変化など、様々なトラブルの原因となり、大切な服を傷めてしまうことになります。
洗濯表示を正しく理解し、それに従って丁寧にお手入れすることで、服は長持ちし、いつまでも美しい状態を保つことができるのです。
新しい洗濯表示の基本構成
新しい洗濯表示は、大きく分けて5つの基本記号と、それらに付加される様々な記号で構成されています。
- 水洗い:家庭での洗濯機洗いや手洗いができるか
- 漂白:漂白剤が使用できるか、その種類
- 乾燥:タンブル乾燥(乾燥機)や自然乾燥の方法
- アイロン:アイロンの温度やスチームの可否
- クリーニング:専門業者によるドライクリーニングやウェットクリーニングができるか
これらの基本記号に、温度の上限、洗い方の強さ、干し方の種類、溶剤の種類などが細かく指示される付加記号が組み合わさることで、より具体的なお手入れ方法が示されています。
各基本記号と付加記号の意味を徹底解説
1. 水洗い(家庭洗濯)の記号
家庭で洗濯できるか、その洗い方を示す記号です。桶の形をしています。
- 桶のみ: 液温40℃を上限とし、洗濯機で通常コース洗いができる。
- 桶+数字 (30, 40, 50, 60, 70, 95): 液温の数字を上限として洗濯機洗いが可能。数字が大きいほど高い温度で洗えますが、一般的に温度が高いほど繊維への負担は大きくなります。
- 桶+下の一本線: 液温の数字を上限とし、洗濯機で「弱水流」や「手洗いコース」などの弱い処理で洗うことができる。
- 桶+下の二本線: 液温の数字を上限とし、洗濯機で「非常に弱い水流」で洗うことができる。最もデリケートな洗濯機洗いです。
- 桶+手: 液温40℃を上限とし、洗濯機は使わず「手洗い」ができる。洗剤が十分に溶ける液温で優しく押し洗いや振り洗いをするのが基本です。
- 桶にバツ: 家庭での洗濯(水洗い)はできない。専門のクリーニング店に相談しましょう。
【Point】 * 線の数が増えるほど、優しく洗う必要があります。 * 手洗いマークは、洗濯機の手洗いコースではなく、あくまで手洗い推奨です。
2. 漂白の記号
漂白剤が使用できるか、その種類を示す記号です。三角形をしています。
- 三角形のみ: 塩素系及び酸素系の漂白剤、どちらも使用可能。
- 三角形+斜線2本: 酸素系漂白剤のみ使用可能。塩素系は使用不可。
- 三角形にバツ: 漂白剤は使用できない。
【Point】 * 「三角形+斜線2本」の場合、誤って塩素系漂白剤を使ってしまうと、服が変色・変質するリスクがあります。洗剤の表示をよく確認しましょう。
3. 乾燥の記号
乾燥方法を示す記号です。四角形をしています。大きく分けて「タンブル乾燥(乾燥機)」と「自然乾燥」の2種類があります。
タンブル乾燥(乾燥機)
四角の中に丸が入った記号です。
- 四角+丸: タンブル乾燥ができる。排気温度の上限は通常60℃。
- 四角+丸+点一つ: タンブル乾燥ができる。低い温度での乾燥(排気温度の上限40℃)。
- 四角+丸+点二つ: タンブル乾燥ができる。高い温度での乾燥(排気温度の上限80℃)。
- 四角+丸にバツ: タンブル乾燥はできない。乾燥機を使用すると、縮みや傷みの原因となります。
自然乾燥
四角の中に線が入った記号です。タンブル乾燥不可の場合に、推奨される自然乾燥の方法を示します。
- 四角+横線一本: 平干しが良い。型崩れしやすいニットなどを平らな場所に広げて干します。
- 四角+縦線一本: 吊り干しが良い。ハンガーなどにかけて干します。
- 四角+横線二本: ぬれ平干しが良い。脱水せず、ぬれた状態で平らな場所に広げて干します。
- 四角+縦線二本: ぬれ吊り干しが良い。脱水せず、ぬれた状態で吊り干しします。
- 四角+左上の斜線: 日陰干しが良い。直射日光を避けて干します。この斜線は、上記の平干し・吊り干し記号と組み合わせて使用されることもあります(例: 四角+縦線一本+左上の斜線 = 日陰の吊り干し)。
【Point】 * 特に「タンブル乾燥にバツ」の記号は重要です。乾燥機は便利ですが、繊維に大きな負担をかけるため、この表示がある場合は絶対に乾燥機を使用しないでください。
4. アイロンの記号
アイロンが使用できるか、その際の温度を示す記号です。アイロンの形をしています。
- アイロンのみ: アイロン仕上げができる。温度の上限は200℃(高温)。麻や綿など比較的丈夫な素材に適しています。
- アイロン+点三つ: 底面温度200℃を上限としてアイロン仕上げができる(高温)。
- アイロン+点二つ: 底面温度150℃を上限としてアイロン仕上げができる(中温)。ウールやポリエステルなど。
- アイロン+点一つ: 底面温度110℃を上限としてスチームなしでアイロン仕上げができる(低温)。アクリルやナイロン、ポリウレタンなど熱に弱い素材。スチームによる変形や光沢消失のリスクがある場合にスチーム禁止を示すことがあります。
- アイロンにバツ: アイロン仕上げはできない。シワを伸ばしたい場合は、スチームを当てたり、霧吹きをして形を整えたりするなど、他の方法を試しましょう。
- アイロン+下から出る曲線にバツ: スチームアイロン仕上げはできない。ドライアイロンのみ可能です。
【Point】 * 点の数は温度の目安です。素材に適した温度を選びましょう。不明な場合は低い温度から試すのが安全です。
5. クリーニングの記号
専門業者によるクリーニングが可能か、その種類を示す記号です。円形をしています。
- 丸のみ: ドライクリーニングができる。クリーニング店に依頼しましょう。
- 丸+P: パークロロエチレン及び石油系溶剤によるドライクリーニングができる。
- 丸+F: 石油系溶剤によるドライクリーニングができる。
- 丸+W: ウェットクリーニングができる。ウェットクリーニングは水を使用するため、より専門的な技術が必要です。
- 丸+W+下線一本: 弱い処理でのウェットクリーニングができる。
- 丸+W+下線二本: 非常に弱い処理でのウェットクリーニングができる。
- 丸にバツ: クリーニングはできない。家庭での洗濯表示も確認し、どちらもバツの場合は、素材の性質上お手入れが非常に難しい服と言えます。
- 丸にバツ+P/F/Wにバツ: 特定のクリーニング方法ができないことを示します。
【Point】 * これらの記号はクリーニング業者向けのものです。基本的に家庭で対応するものではありませんが、「丸にバツ」の表示がある場合は、クリーニング店にも出せないので注意が必要です。
洗濯表示がない、劣化して見えない場合の対処法
古い服や海外で購入した服など、洗濯表示がない、あるいは摩擦などで印字が消えてしまっていることもあります。このような場合は、以下の方法で対処します。
- 素材を確認する: 服の素材(綿、麻、ウール、シルク、ポリエステル、アクリルなど)が分かれば、一般的なその素材のお手入れ方法を調べることができます。ネームタグに素材表示のみ残っている場合もあります。
- 目立たない場所で試す: 洗剤を使う場合や、水にぬらしても大丈夫か心配な場合は、服の縫い代や裾など、目立たない場所に少量の洗剤液をつけたり、水を含ませた布で軽くたたいてみたりして、色落ちや縮み、変質がないか確認します。
- 無理な自宅洗濯は避ける: 素材が不明な場合や、高価な服、装飾が多い服などは、無理に自宅で洗濯せず、信頼できるクリーニング店に相談するのが最も安全です。プロの視点から、服の状態や素材に合ったお手入れ方法を提案してもらえます。
洗濯表示を守らないとどうなるか?
洗濯表示を無視してお手入れをすると、様々なトラブルが発生し、服の寿命を縮めてしまいます。
- 縮み: 特に天然繊維(ウール、綿、麻など)は、不適切な水温や乾燥方法で大きく縮むことがあります。
- 型崩れ: 洗濯機で強く洗いすぎたり、不適切な干し方をしたりすると、服の形が崩れて元に戻らなくなります。
- 色落ち・色移り: 表示に反した洗剤や漂白剤の使用、高すぎる水温での洗濯は、染料が流れ出し、他の服に色移りしたり、服自体の色が褪せたりする原因となります。
- 傷み・劣化: 生地が薄くなったり、毛羽立ちやすくなったり、縫い目がほつれたりするなど、服全体の耐久性が低下します。
- 風合いの変化: せっかくの柔らかな風合いが失われたり、ゴワゴワになったりすることがあります。
これらのトラブルは、一度発生すると完全に元に戻すのが難しい場合が多いです。
まとめ:洗濯表示を理解して大切な服を長持ちさせよう
新しい洗濯表示は、一見複雑に見えるかもしれませんが、それぞれの記号が服にとって何が良いのか、何が悪いのかを明確に示してくれています。
この記事でご紹介した各記号の意味を理解し、洗濯をする前、干す前、アイロンをかける前に必ず洗濯表示を確認する習慣をつけましょう。特に「家庭洗濯にバツ」「タンブル乾燥にバツ」「漂白にバツ」などの禁止マークは必ず守ってください。
洗濯表示を正しく読み解き、服に合った最適なお手入れを実践することで、大切な服を傷めるリスクを最小限に抑え、お気に入りの服をいつまでも快適に、そして美しく着続けることができます。
もし、ご自身での判断に迷う場合や、デリケートな素材、高価な服のお手入れについては、無理をせずプロであるクリーニング店に相談することも賢い選択肢です。洗濯表示は、服からの大切なメッセージです。そのメッセージに耳を傾け、愛情を持ってお手入れしていきましょう。